自閉症などの発達障がいがあるお子さんをもち、幼少期から家庭での療育に取り組んできた先輩ママ・先輩パパの療育体験記。

三上さん(仮名)<中編>では、小学校入学に向けての準備と、入学後のお子さんの生活についてご紹介します。

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 違う学区の学校にも足を運んで支援のあり方を見学

 

小学校入学を控えていた頃のお子さんの様子や、入学に向けての情報収集について教えてください

娘の場合、年中からセラピーを始めて色々できるようになってきてはいましたが、他のお子さんもどんどん成長していくので、通常学級は無茶なのかなという心配がありました。
IQなどの数字的に言えば、明らかに個別支援学級が向いていると言われる値だったんですね。できることは多くない上に、初めての経験に対してとても不安がるという気質がありましたし、手先の操作力が著しく低かったので、実技科目などについていけないだろうと思っていました。

情報収集としては、まずは幼稚園の障がい児のお母さんで集まる会で、先輩ママさんに実際学校がどんな様子なのか話を聞きました。
すると、各学校で特別支援の体制がかなり違うことがわかり、私は何でも調べて自分で確認しておきたいタイプなので、近隣の学校を一通り見学することにしました。

子どもが幼稚園年中の秋以降、地域の住民に学校が開放される日があったりすると、学区が違っても見学させてもらうようにしたんです。
学校によって、通常学級との交流がすごく盛んだったり、交流が一切なかったり、保健の先生も交えた先生のチーム体制で勉強に遅れがちな子を特別にケアする対応をとっている学校があったりと近隣の学校でもそれぞれ特色がありました。

当然、見学した中には実際に行かなかった学校も沢山あるのですが、それでも色々な学校を見てまわったことは無駄ではなかったと思います。
もし学校でいじめにあったら、近隣の学校に転校できるとも聞いたので、万一に備えて見ておいた方が安心だというのもありました。
また、入学した学校で新しいやり方を提案する時の材料として「近隣の別の学校ではこういう風にやっていたんですけど」という打診もできると思いましたので。

実際どういう学級に所属させるべきかについては、それを判定してくれる教育委員会の機関に相談しました。
そこで特別支援学級が適当と判定されたのですが、あくまでそれは参考にすれば良いだけで、親の判断で進学先は決められるので、どうするのか最終段階まで迷いました。

結局、当時は授業内容を他のお子さんと同じように理解して、問題なく集団生活を送るというような未来像が描けなかったので、判定に従う形で特別支援学級に在籍することに決めました。
さらに、たまたま学区の狭間に家があったので、見学をした時に通常学級との交流がより盛んで保護者がいつ学校に顔を出しても構わないというような風通しの良さを感じたことから、本来の学区とは違う学校にお願いをして入学させてもらいました。

 

―――就学に際しては、やはり早めの情報収集が重要で、色々な学校に見学に行ってみることを多くの先輩ママがお勧めしています。見学時の学校側の対応はどうか、クラスにどんな児童がいるか、学校やクラスの雰囲気はどうか、先生同士の協力体制はどうかなど、様々な特色が見えてくるようです。転校の可能性や、他校で見たいい取り組みを学校側に提案する際の材料にもなるという三上さんの考えは、なるほど、と納得です。

 

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 入学後はコンディションに合わせて臨機応変に通常学級と行き来した

 

入学後の学校生活はどのようなものでしたか?

入学した学校の特別支援学級のスタイルとしては、各自交流する通常学級のクラスが決まっていて、子どもの状態や希望に応じてどちらの学級でどういった時間を過ごすか決めることができました。
朝の会は通常学級に行くことが決まっていたので、それ以外の時間に関しては、算数は特別支援学級でゆっくり学ぶことにして、ほかの教科はだいたい通常学級、食べることが好きな子なので給食は通常学級でとらせてもらいました。

通常学級にいる時間でも、実技科目で少し難しいものが出た場合には特別支援学級の先生にサポートをしに行ってもらうこともできました。
また、一つの科目の中でも単元によって学級間を行き来させてもらうこともできました。
どういうことかと言うと、理科で電流のような目に見えないものに関して説明されても理解できないので、そういう単元の時は特別支援学級にいるけど、好きな星についての授業の時は通常学級で授業を受けることができた、というようなことです。
これは毎日の時間割や授業内容を親が把握した上で、連絡帳で毎日先生方に対して具体的な希望をお伝えする必要があるので、親としても負担はありましたけど、そういう形で学校生活を送っていきました。

自宅で学習面での支援はしていましたか?

小学校に入ってからは、色んなお教室に通うのをいったんお休みして、セラピストとのセラピーだけ続けることにしました。
やはり小学校に入って環境が一新されたことで娘が感じる負担は大きいだろうと思ったので、いつものセラピストに甘えたり遊んでもらえたりする時間は確保してあげたかったんですね。

セラピストには入学後も2年間ほど週1・2回程度来てもらって、その中で少しずつ足し算とかを入れていく形でサポートしてもらいました。
また、特別支援学級と通常学級では配布される教科書が違ったので、通常学級の方にできるだけ遅れをとらないように、そちらで使う教科書は自費で購入して、本人ができそうな範囲で自宅でフォローをしていました。

お友達との関係を築く上での課題やサポートはどういったものでしたか?

当時の娘は、お友達に興味はあってもどう接して良いのかわからない状態でした。
定型発達のお子さんは、お友達にどう声を掛けるかや、どう一緒に遊ぶのかを自然に学んでいけるんだと思いますが、周りの子の様子を見て学んだり、見よう見まねでやってみようというのが全くないところが最大の特徴でした。
そこから教えなければいけなかったので、幼稚園の年長の頃には、5人くらいのお友達で集まって一緒にどこかに行ったり遊んだりする機会を頻繁に設けるようにしていました。
小学校に入学したのは、そういったお友達との遊びやセラピーを通じて、人とのやりとりが少しできるようになってきた頃でした。

通常学級にはクラスメイトが40人近くいて馴染むのは難しいだろうと思っていましたが、娘と似たような雰囲気を持った優しいお子さんですと、話が合って遊んだりすることもできたようです。
最初は受け身で、友達になろうって言ってくれた子や、よく席まで来て話してくれる子とだけ話して、自分のほうから行くことはなかったんですが、それでも自分のところに来てくれる子とは仲良くなりたいという気持ちを持って、自分からも話しかけに行ったりできるようになったのは大きな成長かなと思います。

本人もそういう友達ができたのはとても嬉しかったようです。特別支援学級の中だと、タイプの違うお子さんが1年生から6年生まで縦割りで集まっていたので、タイプが合う同じ性別のお子さんは見つかりませんでしたし、そんな中、通常学級の方でクラスメイトのお友達ができたのは本人にとっても自信に繋がったんだと思います。

 

―――入学後は、特別支援学級に在籍しつつ、通常学級でも「交流」として多くの時間を過ごすというスタイルで学校生活を送るSちゃん。家庭での学習面のフォローはもちろん、単元ごとに得意不得意を見極めて学習する場を都度決めていくというお母様のマネジメントは、本当にお子さんの特性や学習スタイルを理解し、学校側とも風通しの良い関係を築いていないとなかなかできることではありません。

 

早期療育が学校生活で生かされたと感じた部分があったら教えてください

我が家の場合は、勉強は後々でもキャッチアップできるかもしれないと思って、6歳くらいまでは対人面でのスキルアップや社会性を身につけることだけを念頭において重点的にセラピーをしてもらいました。
幼児期の頃は、人から何かを教えられることが嫌で嫌でしょうがないという状態だったのですが、セラピーを通じて大人に言われた指示をある程度聞いたらうまくいったというような成功経験を積み重ねていくことで、人から何かを教わることができるようになったのは、大きな成果だったと思います。

学校では、授業内容にしても生活全般にしても、先生という大人の指示を聞いて行動する必要があるので、人との信頼関係を築いてその人から何かを教えてもらうための基礎を築けたのは非常に良かったです。

 

―――これは実はとても大事なことです。発達が気になるお子さんの中には、実際には色々な力を持っていても、何かを教わって新しいことに挑戦することが苦手な子がいます。もともと初めてのことに対して不安が強いという特性もありますが、幼い頃から他者とのコミュニケーションや、何かを新しくやってみる場面において、大小様々な失敗体験を積み重ねてしまっている、ということがあります。「失敗から学ぶ」ことはもちろんありますが、失敗体験が成功体験よりはるかに多い場合はどうでしょうか。「人の言うことを聞いてもいいことがない」「挑戦してもできない」という学習を幼少期にしてしまうと、小学校に入って色々な人がその子のために何かを教えようとしても、指示を聞けない、頑張ってやってみることができない、といった状況に陥り、子ども自身が自分の可能性を広げることを拒んでしまう場合があります。ABAの早期療育では、その子が必ず成功できる課題をスモールステップで設定し、必要ならさりげなく手助けをして達成させ、大いに褒めることを繰り返します。セラピストなどの他者とのコミュニケーションで沢山の成功体験を積んだ子どもは、その後の人生でたくさん出会うであろう「何かを教えてくれる人」のアドバイスを信じて受け入れ、頑張ってやってみる素地ができます。これがその子の強みとなります。

 

特別支援学級に在籍していたSちゃんですが、その後中学受験を見越して通常学級に移籍するという異例の進路を辿ります。<後編>では、通常学級への移籍や中学受験・中学校生活について伺います。