療育の種類と選びかた

自閉症は、その原因が未だ解明されていないため、症状を根本から解決する特効薬は存在しません。しかし、療育によって、お子さんが様々な苦手を克服し、症状の改善が期待できることがわかっています。以下に、よく行われている療育を取り出してみました。

  • 応用行動分析(ABA)に基づく療育

    ABAの特徴は ABAの特徴は
    ABAの特徴は?
    個人と環境の相互作用に着目する

    ABAでは、個人の行動を「個人と環境との相互作用の結果」としてとらえます。発達障害のある子どもは、周囲の環境を理解し、 そこから自然に学ぶことが苦手なため、環境側の刺激を操作することで、子どもの学びを促します。

    悪い行動には注目せず、良い行動を増やす

    出来ない行動や不適切な行動を変えることに重点を置くのではなく、今出来る適切な行動に着目し、そこに働きかけることで、相対的に不適切な行動を減らしていきます。

    ABAでどのように教えるの?

    ABAに基づく療育では、ターゲットとしたスキルが獲得されたかを指導の前後で客観的に記録することで、その成果を測定し、指導方法の見直しや、新たな目標の設定を行います。

    最も基本的な教え方はこの3ステップから成り立ちます。

    3ステップ 3ステップ

    徐々にプロンプトを減らし、自発的な反応へと導きます。 強化子も、日常の中で自然と使えるものに移行していきます。

    ABAで何ができるの?
    ①問題行動の分析と対処

    ABAの理論を用いて子どもの行動がどのような機能を持っているのか見極め、問題となる行動を減らしたり、もっと適切な別の行動に置き換えます。

    ②日常生活における子育ての工夫

    生活に必要なスキルや毎日の決まった活動などを、日常の場面の中で教えていきます。

    ③認知・コミュニケーション能力の底上げ

    発達の過程で子どもが獲得するべき基礎的な能力を、集中的・効率的に教えていきます。 模倣や指示理解、言葉やカードを使ったコミュニケーションの練習などを行います。

    保護者ができること
  • 薬物療法

    対症療法として療育のための一時的な症状緩和として。ただし、副作用もあるため要注意。

    自閉症の中核症状である社会的なコミュニケーションのむずかしさや、限定された興味について明らかな効果を持つ薬物はいまだ開発されておらず、基本的には対症療法として薬物が用いられています。そのため、薬物による治療は療育とセットで行われることが望ましいと言えます。例えば、不注意や多動傾向が強い場合、てんかん発作が随伴する場合、パニックや癇癪が起きやすい場合、二次障害として不安や抑うつ気分が強くなった場合などに、症状に合わせた薬を服用することで、その緩和が期待できます。効果は服薬している間にのみ維持されるため、この間に療育的かかわりをすることによって適切な行動を効率よく学べるメリットがあります。薬である以上、副作用もあるため、医師とよく相談しましょう。

    保護者ができること
  • 食事療法

    「小麦に含まれるグルテン、乳製品に含まれるカゼインが腸内で麻薬作動性物質に分解され、これが中枢神経系に達すると脳の機能を妨害する」と仮定し、グルテンやカゼインを除去した食事をすることで、自閉症の行動面、学習面の改善を目指すというものです。いくつかの研究が行われており、また、個人のエピソードレベルでは効果が示されていますが、研究ごとに結果が異なっていたり、研究デザインに欠陥があることも指摘されており、自閉症の症状の改善に効果があると結論付けるのは難しいと言えます。自閉症とは別に、グルテンにアレルギーを起こす人もいるため、その場合にはこの療法によって体調が整い、生活の質が向上する効果が得られるものと考えられます。重大な副作用は現在のところ確認されていません。

    親子で学ぶ療育プログラム
  • 音楽療法

    音楽療法士という民間資格を持った音楽療法の専門家が行います。音楽を用いてソーシャルスキルの獲得や運動機能の発達を促したり、ストレスや不安の軽減を目指すもので、子ども自身が音楽活動を行う能動的音楽療法と、音楽を鑑賞する受動的音楽療法に分けられます。自閉症幼児を対象とする大規模な研究は行われておらず、その症状の改善に具体的な効果があることは証明されていないのが現状です。ただ、他者を意識しタイミングを合わせるなど、非言語のコミュニケ―ションスキルを磨くことができたというエピソードは聞かれるため、よい指導者がいて、音楽に関心があるお子さんであれば、こうしたスキルの学習につながることがあるかもしれません。

    保護者ができること
  • 作業療法

    作業療法士(OT:Occupational Therapist)という国家資格を持った専門家が行います。日本の公的な療育機関でも、OTによる作業療法が取り入れられ、多くの場合は、米国で考案され1980年代に日本に紹介された感覚統合療法がおこなわれています。
    感覚には、よく知られている視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚以外にも、固有感覚(身体の動きや手足の状態の感覚)、前庭感覚(身体の傾きやスピードの感覚)があります。生活をしていると脳には絶えずこうした様々な感覚刺激が入ってきますが、うまく整理しまとめること(=感覚統合)ができています。しかし自閉症のあるお子さんの多くが、こうした様々な感覚の処理や統合に困難があることが指摘されており、感覚統合療法ではこの統合を促すことを目指しています。ハンモックや大型のブランコに乗せて揺らしたり、平均台を歩いてバランスを保つなど、個々の子どもの「感覚上のニーズ」に基づいて、その子どもに合わせた活動を選択します。研究も行われていますが、効果的な療育方法といえる十分な結果は得られておらず、今後のエビデンスの蓄積が期待されます。

    親子で学ぶ療育プログラム
  • TEACCH(ティーチ)

    TEACCH(Training and Education of Autistic and Reated Commnication Handicapped Children)は、米ノースカロライナ州立大学で始まった自閉症の方々やそのご家族、支援者を対象にした包括的なプログラムを指します。環境を構造化し、何をするべきか視覚的にわかりやすく示すことで、子どもたちのスキルの習得を促します。プログラムの中では、ただ環境整備をするだけでなく、アセスメントに基づいて目標が立てられ、視覚的な支援を通じて新しいスキルの獲得へと導くことも行われていますが、日本で広まっているTEACCHは、新しいスキルを学習させるというよりも、環境整備をして過ごしやすくする、視覚的な支援でスケジュールの理解を促す、といった目的で使われることが多いようです。TEACCHは研究によって、その効果が証明されている療育方法の1つです。

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選び方のポイント

たくさんの療育の中から、どうやって選べばよいのか、迷われる方も多いと思います。私たちが考える療育の選び方のポイントは以下の3つです。

  • エビデンスの有無

    エビデンスの
    有無

    科学的なエビデンスに基づいた支援を受けることは、お子さんの権利だと考えます。
    症状の改善に効果があるかどうか、研究によって示されている方法が望ましいと言えます。

  • 発達に合わせたプラン

    発達に合わせた
    指導プランの有無

    お子さんに合わせた具体的な目標があり、具体的な指導方法があること。記録をとって達成度を見極め、支援方法を進化させていくこと。これを短いスパンで繰り返し、全般的な発達を促すことができる療育が望ましいと考えます。

  • 楽しさと学びのバランス

    楽しさと学びの
    バランス

    まず、お子さんが楽しんでいるかが大切です。しかし、療育の目的はそれだけでなく、お子さんのできることを増やしていくことですので、楽しみながら、新しいことを学べているかどうかも大切なポイントです。

【ABA】

Cooper, J. O., Heron, T., E., & Heward, W., L. (2006). Applied Behavior Analysis (2nd ed.). Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall. 山本 淳一 (著), 加藤 哲文 (著), 小林 重雄 (監)(1997)『応用行動分析学入門―障害児者のコミュニケーション行動の実現を目指す』学苑社. Yamamoto, J., & Shibuya, N. (2009). Evidence-based support for persons with developmental disabilities: contribution of applied behavior analysis. Japanese Journal of Behavior Analysis, 23, 46-70.

【薬物療法】

Treatment-Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/treatment.html

【食事療法】

IAN Research Report: Special Diets-AUTISM SPEAKS
https://www.autismspeaks.org/news/news-item/ian-research-report-special-diets

【音楽療法】

・音楽療法の紹介‐日本音楽療法学会
http://www.jmta.jp/leaflet/presentation.pdf
・Music Therap+F13:F17y and Autism-RESEARCH AUTISM
https://www.researchautism.net/interventions/39/music-therapy-and-autism

【作業療法】

・有川真弓 ,繁田雅弘,山田孝「わが国の感覚統合療法効果研究の現状―文献のシステマティックレビユー -」(『日本保健科学学会誌』第9巻第3号、2006年、170-177ページ)
・感覚統合療法(Sensory Integration)-地方独立行政法人奈良県立病院機構奈良県総合リハビリテーションセンター
http://www.nara-pho.jp/reha/rehabilitation/reha_si.html

【その他】

Prior M, Roberts JMA, Rodger S, Williams K, Sutherland R. A Review of the Research to Identify the Most Effective Models of Practice in Early Intervention of Children with Autism Spectrum Disorders. Australian Government Department of Families, Housing, Community Services and Indigenous Affairs (2011).

AUTISM

自閉症について

自閉症について

自閉症は、先天的な脳の機能障がいです。視線が合わなかったり、特定のものに強いこだわりが見られるなど、コミュニケーションを目的とした言葉が出ないなどといった行動特徴が明らかになります。その障がいの名前から「心の病気」という誤った印象を持たれがちですが、自閉症は心の病気ではありません。

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ADDSについて

ADDSについて

特定非営利法人ADDSは、自閉症があるお子さんとその保護者の方が、早期の適切な支援によって、可能性を最大限に広げられる社会の実現を目指します。そのために、保護者や、あらゆる支援者、未来の担い手である学生にとっての「学びの場」であることを大切にします。

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