ADDSは自閉症児を支援する人の“学びの場”です

自閉症について

自閉症とは

自閉症は、通常生後30ヶ月までに発症する先天的な脳の機能障がいです。 視線が合わなかったり、1人遊びが多く、関わろうとするとパニックになったり、 特定の物に強いこだわりが見られたり、コミュニケーションを目的とした言葉が出ないなどといった行動特徴から明らかになります。 その障がい名から、「心の病気」という誤った印象をもたれがちですが、自閉症は心の病気ではありません。
自閉症とは、先天的な脳の中枢神経の機能障がいで、自分を取り巻く様々な物事や状況が、定型発達者と呼ばれる私たちと同じようには脳に伝わらないために、 結果として対人関係の問題やコミュニケーションの困難さ、特定の物事への執拗なこだわりを呈するという障がいです。

自閉症スペクトラム障がいとは

話す力やことばの理解、形を認識する力や状況を理解する力などの知的な能力が、年齢に比して全般的に低いレベルにあり、 社会生活をしていく上で、理解と支援が必要な状態を、精神遅滞(知的障がい)と言います。 自閉症の中でも、そのような精神遅滞を伴う場合と伴わない場合とがあり、精神遅滞を伴わない自閉症を、高機能自閉症といいます。具体的には、IQ70以上であれば、精神遅滞を伴わないとされていますが、IQ70~85は境界領域知能と言われることもあります。
高機能自閉症とよく似た特徴を示し、発達初期に言葉の遅れが無く、比較的言語が流暢な場合に、アスペルガー症候群と診断されることもあります。 高機能自閉症やアスペルガー症候群は、「高機能」という言葉からも、その障がいが軽いと誤解されがちですが、精神遅滞がないからといって、 社会性の障がい、つまり自閉症の本質的な障がいが軽いというわけではありません(Richman, 2003)。そのような誤解から、 周りからの理解や支援が得られにくいという例も多く、より正確な知識の普及や行き届いた支援が望まれます。
さらに、自閉症ほど典型的ではないが、自閉症としての特徴がいくつかあることを指して、非定型自閉症、または特定不能の広汎性発達障がいと言うこともあります。
このように、知的な障がいや自閉症の重症度によって、呼び方が異なりますが、自閉症とアスペルガー症候群、非定型自閉症を併せて、自閉症スペクトラム障がいと呼びます。

診断基準

自閉症の診断基準としてよく用いられるのは、アメリカ精神医学会が刊行した”Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-Ⅳ-TR)”で、ここでは12の診断基準が、①対人的相互反応の質的な障がい、②意志伝達の質的な障がい、③限定された活動や興味の3つに分けられています。 自閉症の診断には、この3つのカテゴリーから合計で6つ以上、そのうち少なくとも①から2つ、②、③から1つずつの基準を満たしていることが必要です(DSM-Ⅳ-TR; American Psychiatric Association,2000)。

1.対人的相互反応の質的な障がい

自閉症児は、アイコンタクト、表情理解、身振りなどの非言語性行動の理解が苦手で、遊びのスキルが低く、年齢相応の社会的な関わりを築くことも困難です。 また、自閉症児は赤ちゃんの頃、だっこを期待する様子がなく、だっこ自体を嫌がることすらあります。 いないいないばあをしても喜ばなかったり、世話をしてくれる人を目で追わなかったりもします。 幼児期になると、定型発達の子供たちのように人見知りをすることがなく、人に対する愛着行動がほとんどなかったり、あるいは極端であったりします(Richman, 2003)。

2.意志伝達の質的な障がい

自閉症児は、質的にも量的にも話し言葉の障がいがあります。 自閉症児のうち約40%は、適切な支援が得られない場合、言語がまったく発達せず、それをジェスチャーや他のコミュニケーション手段で補おうともしません。 話し言葉が発達する子供も、そのスキルを他者との会話に適切に用いることができません。 言葉の不適切な使い方の例としては、エコラリア(言葉や文章を機械的に繰返す)、話すスピードや抑揚が平坦、「いってきます」「いってらっしゃい」などのやりとりの混乱、 受容言語と表出言語のバランスが悪いことなどが挙げられます(Richman, 2003)。

3.限定された活動や興味

自閉症児には常同行動や同一性保持の傾向が見られます。 常同行動の例としては、手をひらひらさせる、身体を揺らす、顔をしかめる、手で何かを叩き続ける、奇声をあげる、などが挙げられます。 また、行動や習慣のパターンに異常にこだわったり、物の全体ではなく部分に目を奪われたりもします。 制限されたパターン化された行動には、様々な感覚刺激が関連していると考えられます。 自閉症児は、触覚が過敏か、もしくは非常に鈍感であったり、嗅覚や味覚が過敏であったり、物の配置や文字、数字に執着するなどの視覚的なこだわり行動も見られます(Richman, 2003)。

発症率

1960年代以来、自閉症の発症率は1万人に4~5人という数値が定説でしたが、近年、自閉症の診断を受ける幼児の数は急増しています。 その原因として、診断基準の整備、自閉症を発見・診断する感度の改善、調査方法上の問題などが挙げられますが、はっきりとした増加の原因は分かっていません。 米国の疾病管理予防局(Centers for Disease Control and Prevention; CDC)の調査から、自閉症と診断された子どもの率は88人に一人である、との結果が報告されています(Centers for Disease Control and Prevention, 2008)。

歴史と研究成果

自閉症は1943年、レオ・カナーによって初めて報告されました。レオ・カナーはアメリカの児童精神科医で、自閉症と小児精神分裂病の違いを認め、自閉症を別な疾患としました。1960年代に入ると、ブルーノ・ベッテルハイムが、『うつろな砦』(The Empty Fortress)という本を出版し、その中で、自閉症は親が子どもを拒絶するせいで起こるという持論を述べました。ベッテルハイムは、当時の精神分析の流行もあり、親の拒否が子どもを自閉的な状態へと追い込んでしまうと考えていたのです。 このような誤った考え方は、今日に至るまで自閉症児とその家族を苦しめています。
このような精神分析の流れに反して、1960年代の中ごろまでに、イヴァー・ロヴァースはすでに自閉症児の研究を始めていました(Lovaas, 1973)。 彼を最も有名にしたのは1970年代初頭に行った研究でした。それは、行動変容法や応用行動分析を取り入れた1対1の治療を集中的に行うもので、対象となった19人の自閉症児のうち、9人が「定型発達機能」を獲得したと報告されています(Lovaas, 1987)。明白な科学的データに基づいたその研究結果は、非常に重要なものとなり、 従来の精神分析的立場に衝撃を与えました。
それ以降、自閉症は母親の養育態度やそれに対する子どもの防衛機制がもたらすものではなく、 何らかの遺伝的要因によってもたらされる先天的な障がいであるということが、研究により明らかになってきました。また、自閉症児に対する集中的な療育の効果も、様々な研究から明らかとなってきました。 Sallows and Graupner(2005)は、LovaasのUCLAモデルを改変し、23人の自閉症児を対象として2~4年間のトレーニングを実施しました。 その結果、23人中11人が、7歳の時点で定型発達域の知的発達を示しました。
このような科学的根拠に基づく研究成果をまとめて、 2000年に発行されたNY州保健省推奨の早期療育ガイドラインでは、 ①最低週20時間以上のセラピストによる集中指導、 ②集中指導に関わる全員に対する定期的な専門家の指導、 ③親が療育チームの一員となる、 ④親が行動療法に精通し、セラピー時間外でも療育を心がける、 ⑤専門家による親への教育を継続的に行い、かつ親とセラピストは定期的にミーティングを行う、 という5つの基本要素が、科学的かつ効果的な支援には必要であると記されています(New York State, 2000)。 我が国でも、「発達障がい者支援法」の制定(2005年)や特別支援教育のスタートにより、自閉症をはじめとする発達障がいへの認知が高まってきており、 この障がいの早期発見と早期支援の必要性が高まってきています。

(参考文献)

American Psychiatric Association (2000). Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 4th edition, text revision(DSM-Ⅳ-TR). Washington, DC: American Psychiatric Association.

Lovaas, O., I. (1973). The development of a treatment-research project for developmentally disabled and autistic children. Journal of Applied Behavior Analysis, 26, 617-631.

Lovaas, O., I. (1987) Behavioral treatment and normal educational and intellectual functioning in young autistic children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55, 1, 3-9.

New York State (2000). Report of the Recommendations – Autism / Pervasive Developmental Disorders. NY State Dept. of Health Early Intervention Program.

Richman, S. (2003). 井上雅彦, 奥田健次監訳, テーラー幸恵訳. 『自閉症へのABA入門』東京書籍.

Sallows, G., O., & Graupner, D., T. (2005). Intensive behavioral treatment for children with autism: Four-year outcome and predictors. American Journal of Mental Retardation, 6, 417-438.